結果報告書の見方
- 結果報告書がお手元に届きましたら、まず“総合結果”をご確認ください。
- 各検査値に対し基準範囲(基準値)が設定されていますが、基準範囲は健康者100人中 95人が入る範囲であり、健康者でも基準範囲から外れる率が5%あります。また、予防医学の視点から、将来の疾病発生を防止するために望ましい数値を基準値として設定している項目もあります。
必ずしも範囲内だから正常、外れたから異常とは判断できないので、正常範囲(正常値)ではなく、基準範囲(基準値)という用語を用いています。 - 病気があっても検査の網の目を逃れてしまう場合があります。何らかの自覚症状が出現した場合には、直ちに医療機関を受診してください。また、現在通院中の方は今回の結果を主治医にお見せになり、今後の治療にお役立てください。
①判定について
結果報告書では身体の機能や臓器などで分類した項目ごとにアルファベットで判定を付けています。下表を参照していただき、次回の人間ドック・健康診断のご受診までの健康管理にお役立てください。
A:異常なし
今回実施した検査では異常を認めませんでした。 |
B:日常生活に問題となる異常なし
検査結果はわずかに基準範囲外ですが、日常生活に問題となる(臨床上の)異常はありません。 |
C:経過観察
1年後の人間ドックや健康診断等で経過観察をしてください。 |
C1: 6ヶ月後再検査
数値の変動や病態の変化を観察するため、人間ドック・健康診断の受診から6ヶ月後を目安に医療機関にて再検査をお受けください(結果報告書に受診時期の指示がある場合は、その指示に従って医療機関を受診してください)。 |
C2:3ヶ月後再検査
数値の変動や病態の変化を観察するため、人間ドック・健康診断の受診から3ヶ月後を目安に医療機関にて再検査をお受けください(結果報告書に受診時期の指示がある場合は、その指示に従って医療機関を受診してください)。 |
D:要再検査・精密検査
今回実施した検査で異常が認められました。今後、定期的な経過観察・通院が必要となるのか、治療を開始した方がいいのか等を鑑別するため、必ず医療機関を受診してください。 |
E:要治療
治療が必要です。速やかに医療機関を受診してください。 |
F:治療または経過観察の継続
今回の問診(問診票への記入を含む)で経過観察中、もしくは治療中と確認した項目です。結果を主治医にお見せになり、今後の治療にお役立てください。 |
G:判定不能
何らかの要因で今回の検査結果を正しく判定することができませんでした。
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②医療用語について
検査項目説明書
検査項目の説明を印刷する(PDF:338KB)
所見用語解説
胸部X線所見 心電図所見 腹部超音波所見 上部消化管内視鏡(胃カメラ)所見 上部消化管X線(バリウム)所見 乳房超音波所見 マンモグラフィ所見 子宮頸部細胞診所見【胸部X線】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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ブラまたは嚢胞影 | 肺組織の中の空気が入った袋(肺胞)が拡張し、空洞のようになった状態です。小さなものは問題ありませんが、大きなものは破裂すると気胸を起こすため経過観察が必要です。 |
気胸 | 肺胞の一部が嚢胞化したもの(ブラ)や胸膜直下に出来た嚢胞(ブレブ)が破れ、胸腔内に空気が漏れ、肺が縮んでしまった状態です。 |
肺紋理増強 | 肺の血管や気管支、神経、リンパ管などの重なりが構成する模様(肺紋理)が、レントゲン写真上強く写っている状態です。 |
奇静脈葉 | 肺が形成される過程での先天的な異常で、右肺の上部が二つに分かれている状態です。 |
浸潤影(限局性・びまん性) | 炎症などで細胞成分や液体成分が貯留し、柔らかい綿状、線状、粒状の影がみられる状態です。 |
結節影(孤立性・多発性) | 境界のはっきりとした、径5~30mmの丸い陰影です。大きさ・個数・性状によっては定期的な経過観察や精密検査が必要な場合もあります。 |
線状・索状影 | 太さが1~2mmの細い陰影を線状、2~3mmのやや太い陰影を索状影といいます。 |
縦隔拡大 | 左右の肺の間の部分を縦隔といい、レントゲン写真上この部分の幅が広くなっている状態です。 |
縦隔腫瘍 | 左右の肺の間の部分の縦隔にできた腫瘤です。 |
縦隔リンパ節腫大 | 左右の肺の間の部分を縦隔といい、この部位にあるリンパ節が腫れている状態です。 |
大動脈蛇行 | 大動脈が動脈硬化により、彎曲している状態です。 |
大動脈石灰化影 | 大動脈の動脈硬化により、血管壁にカルシウムが沈着している状態です。 |
心陰影の拡大 | 胸郭の幅に対しての心臓の陰影の幅の割合(心胸郭比)が大きい状態です。心疾患以外に肥満でも認められますが、拡大の程度によっては精密検査が必要です。 |
右側大動脈弓 | 大動脈は心臓から出て、まず上方(頭側)に走行した後、左側に曲がり下方に走行しますが、先天的に右側に曲がっている状態です。 |
右胸心 | 本来胸部の左側にある心臓が、先天的に右側にある状態です。 |
【心電図】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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洞性頻脈 | 心電図の波形は正常ですが、心拍数が1分間に100回以上です。健康な人でも運動時や緊張状態でみられますが、甲状腺疾患、貧血などを原因とする場合もあり、頻脈の程度、動悸などの症状の有無等によっては、精査が必要となります。 |
洞性徐脈 | 心電図の波形は正常ですが、心拍数が1分間に50回未満です。運動習慣がある等の健康な人にもみられますが、薬剤の副作用、洞不全症候群、甲状腺疾患などを原因とする場合もあり、徐脈の程度、立ちくらみ・めまいなどの症状の有無等によっては、精査が必要となります。 |
洞性不整脈 | 心電図の波形は正常ですが心拍リズムが大きく変動しています。健康な人でも緊張状態や深呼吸時などにみられます。 |
上室性期外収縮 | 正常なリズムの心拍の間に心室よりも上位から発生した電気的興奮による心拍が割り込み、心拍リズムが乱れています。健康な人にもみられますが、出現の頻度や症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
心室性期外収縮 | 正常なリズムの心拍の間に心室から発生した電気的興奮による心拍が割り込み、心拍リズムが乱れています。健康な人にもみられますが、出現の頻度や症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
左軸偏位 | 心臓の電気軸が左に偏っています。肥満者や高齢者などによくみられます。他の所見を伴う場合には合わせて評価が必要です。 |
右軸偏位 | 心臓の電気軸が右に偏っています。痩せた人や若年者などによくみられます。他の所見を伴う場合には合わせて評価が必要です。 |
反時計回転 | 心臓が足側からみて反時計回りに回転しています。他の所見を伴う場合には合わせて評価が必要です。 |
時計回転 | 心臓が足側からみて時計回りに回転しています。他の所見を伴う場合には合わせて評価が必要です。 |
高電位 | 高血圧、肥満、心筋症など心臓への負荷が大きい場合に心電図の電位が高く記録されることがあります。健康な人でも若年者や痩せた人などにもよくみられる所見です。 |
低電位差 | 胸水・心嚢水貯留、肺気腫などの疾患で心電図の電位が低く記録されることがあります。健康な人でも皮下脂肪の厚い人や小柄な人などにもよくみられる所見です。 |
左室肥大 | 心電図の波形から左心室の肥大(心臓の壁が厚い状態)が疑われます。心筋症や心臓弁膜症など心臓に負荷がかかる疾患の可能性がありますが、健康な人でも運動習慣のある人などにはよくみられる所見です。 |
Ⅰ度房室ブロック | 心臓の電気的興奮が心房から心室に伝わる時間が延長しています。迷走神経が緊張した状態や加齢などでよくみられる所見です。 |
Ⅱ度房室ブロック | 心臓の電気的興奮が心房から心室に伝わらない状態が生じています。その程度や自覚症状によっては精密検査が必要となります。 |
Ⅱ度房室ブロック(Wenckebach型) | 心臓の電気的興奮の心房から心室に伝わる時間が徐々に遅くなり、1拍伝わらなくなる状態を繰り返す状態です。自覚症状などによっては精密検査が必要な場合もあります。 |
Ⅱ度房室ブロック(MobitzⅡ型) | 心臓の電気的興奮が心房から心室に突然伝わらなくなる状態です。頻回に生じると意識消失発作を起こす可能性がありますので、精密検査が必要です。 |
完全房室ブロック | 心臓の電気的興奮が心房から心室に全く伝わらずに、心房と心室が無関係に動いている状態です。意識消失発作を起こす可能性がありますので、早急に精査・治療が必要です。 |
WPW症候群 | 心臓の電気的興奮が伝わる通常の経路の他にケント束という経路が存在しています。頻脈発作を起こす可能性がありますので、動悸などの症状の有無によっては精査が必要となります。 |
PR短縮 | 心臓の電気的興奮の心房から心室に伝わる時間が短めです。動悸などの症状がある場合には精査をお勧めします。 |
不完全右脚ブロック | 心臓の右心室の電気的興奮の伝わる経路(右脚)において、興奮の伝わり方が遅くなっています。健康な人にも多く見られますが、動悸などの胸部症状や立ちくらみ・めまいなどがある場合には精査をお勧めします。 |
完全右脚ブロック | 心臓の右心室の電気的興奮の伝わる経路(右脚)において、興奮の伝わり方が遅くなっています。健康な人にも多く見られますが、胸部症状がある場合には精査をお勧めします。 |
左脚ブロック | 心臓の左心室の電気的興奮の伝わる経路(左脚)において、興奮の伝わり方が遅くなっています。何らかの心疾患が疑われますので精査が必要です。 |
心室内伝導障害 | 心臓の電気的興奮の伝わる心室内経路の障害が疑われます。異常の程度や症状の有無によっては精査が必要となります。 |
左脚前枝ブロック | 心臓の左心室の電気的興奮の伝わる経路のひとつ(左脚前枝)において、興奮の伝わり方が遅くなっています。胸部症状がある場合には精査をお勧めします。 |
陰性T | 通常上向きである心電図の波形のT波が下向きです。心肥大、虚血性心疾患などの可能性がありますので、他の心電図所見や胸部症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
高いT波 | 心電図の波形のT波の高さが高めです。電解質異常などの可能性がありますが、健康な若年者にもよくみられる所見です。胸部症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
非特異的ST-T変化 | 心電図の波形のST-T部分に病的意義はないと考えられる軽度の変化が見られます。健診などで定期的に心電図検査をお受けください。 |
左脚後枝ブロック | 心臓の左心室の電気的興奮の伝わる経路のひとつ(左脚後枝)において、興奮の伝わり方が遅くなっています。胸部症状がある場合には精査をお勧めします。 |
心房細動 | 心房の規則的な動きが障害されているために心臓全体の拍動リズムが乱れる不整脈です。心不全、脳梗塞などを引き起こす可能性がありますので、精査・治療をお受けください。 |
心房粗動 | 心房の正常な動きが障害されています。動悸、頻脈発作などを引き起こす可能性がありますので、精査をお受けください。 |
異所性心房調律 | 心臓の電気的興奮が心房内の通常とは異なるさまざまな位置で発生しています。健康な人にもみられますが、胸部症状がある場合には精査をお受けください。 |
上室頻拍 | 心室よりも上位から発生した電気的興奮によって心拍が速くなる不整脈です。出現頻度、持続時間、症状の有無等によっては治療を要する場合がありますので精査が必要となります。 |
心室頻拍 | 心室から発生した電気的興奮によって心拍が速くなる不整脈です。出現頻度、持続時間、症状の有無等によっては治療を要する場合がありますので精査が必要となります。 |
心室調律 | 心臓の電気的興奮が通常とは異なり心室で発生しています。心拍数が低下し意識消失発作を起こす可能性がありますので、早急に精査・治療が必要です。 |
不定軸 | 心臓の電気軸が心電図上特定できませんが、ほぼ正常所見と判断されます。 |
右室肥大 | 心電図の波形から右心室の肥大(心臓の壁が厚い状態)が疑われます。心筋症や心臓弁膜症など疾患の可能性があります。 |
房室解離 | 心房と心室が関連なくそれぞれ独自のリズムで動いている状態です。心拍数が低下し意識消失発作を起こす可能性がありますので、早急に精密検査が必要です。 |
S1、S2、S3パターン | 心臓の電気軸が正常パターンから大きく偏っています。やせ型の体型や呼吸器疾患のある人によくみられます。多くの場合問題ありませんが、他の所見を伴う場合には合わせて評価が必要です。 |
Q、QS型 | 心電図の波形で、R波と呼ばれる部分がなくQ波のあとにS波がある状態です。心筋梗塞などで認められる波形ですが、健康な人にもみられる所見です。 |
RSRパターン | 心電図の波形で、右心室の刺激伝導に正常よりも時間を要する状態です。健康な人にもよくみられる所見です。 |
QT延長 | 心電図の波形でQ波とT波との間隔が正常よりも延長している状態です。重篤な不整脈を生じることがありますので、QT延長の程度や症状などによっては、精密検査を要します。 |
Brugada型波形の疑い | Brugada症候群(不整脈疾患)の可能性がある心電図の波形です。失神・意識消失などの症状や突然死の家族歴がある場合には精密検査が必要です。 |
洞房ブロック | 心臓の洞結節から発生した電気的興奮の心房への伝達が障害されている状態です。めまい、失神などの症状がある場合には精密検査が必要です。 |
平低T | 心電図の波形のT波が平坦です。心肥大、虚血性心疾患などの可能性がありますので平低Tの程度や胸部症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
STーT異常 | 心肥大、虚血性心疾患などの可能性がありますのでST異常の程度や胸部症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
ST上昇 | 虚血性心疾患などの可能性がありますのでST低下の程度や胸部症状の有無等によっては精査が必要となります。 |
R波増高不良 | 心電図の波形で、R波と呼ばれる部分が正常よりも低い状態です。心筋梗塞などで認められる波形ですが、健康な人にもみられる所見です。 |
R波の減高 | 心電図の波形で、R波と呼ばれる部分が正常よりも低い状態です。心筋梗塞などで認められる波形ですが、健康な人にもみられる所見です。 |
【腹部超音波】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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胆嚢ポリープ | 胆嚢壁にできた疣状の構造物です。ほとんどが良性のポリープですが、大きさ・性状によっては定期的な経過観察や精密検査が必要な場合もあります。 |
胆嚢壁肥厚 | 胆嚢の壁が厚くなった状態です。慢性胆嚢炎や胆嚢壁の腫瘍が原因となることがあります。 |
胆嚢腺筋腫症 | 胆嚢の粘膜の腺組織と筋肉組織が増殖した良性腫瘤です。 |
脂肪肝 | 肝細胞に脂肪が蓄積した状態です。肥満、飲酒、脂質異常症(高脂血症)などが原因となります。食生活に留意し、適度の運動を心がけてください。 |
肝嚢胞 | 液体または半固形物を含んだ袋状の構造物です。小さなものはよくみられます。大きさ・性状によっては定期的な経過観察や精密検査が必要な場合もあります。 |
肝血管腫 | 肝臓内の血管が一部スポンジ状に増殖してできた腫瘤です。良性の腫瘍ですが、初めて見つかった場合や大きさ・性状によっては定期的な経過観察や精密検査が必要な場合もあります。 |
肝臓石灰化 | 肝臓内にできたカルシウムの集合体です。過去の炎症・感染・出血などの痕と考えられ、通常病的意義はありません。 |
膵管拡張 | 膵臓内にある膵管が拡張した状態です。結石・腫瘤・慢性膵炎などが原因となることがあります。 |
膵嚢胞 | 液体または半固形物を含んだ袋状の構造物です。膵炎、外傷に伴うものや、腫瘍性のものもあり、大きさ・性状によっては定期的な経過観察や精密検査が必要な場合もあります。 |
副脾 | 本来の脾臓とは離れた所に存在する、小さな脾臓組織の塊です。通常病的意義はありません。 |
脾臓腫大 | 脾臓が腫れている状態です。血液や肝臓の病気などが原因で脾臓が腫れて大きくなることがあります。 |
腎嚢胞 | 液体または半固形物を含んだ袋状の構造物です。小さなものは問題ありませんが、大きさ・性状によっては定期的な経過観察や精密検査が必要な場合もあります。 |
腎盂拡張 | 腎臓で作られた尿の流れがせきとめられ、腎臓内部の腎盂が拡張している状態です。尿路結石、腫瘍などが通過障害の原因となっていることもあります。 |
水腎症 | 腎臓で作られた尿の流れがせきとめられ、尿の通り道や腎臓の中に尿が溜まって拡張している状態です。尿路結石、腫瘍などが原因となっていることがあります。 |
腎血管筋脂肪腫 | 血管、筋肉、脂肪などの組織からなる良性腫瘍です。 |
重複腎盂 | 一つの腎臓に一個しかない腎盂(腎臓内の尿が溜まる場所)が、発生過程で二個生じた状態です。病的意義はありません。 |
馬蹄腎 | 両側の腎臓が下部でつながり、馬蹄形をしている状態です。腰痛や水腎症、尿路結石などの合併症がなければ、問題ありません。 |
【上部消化管内視鏡(胃カメラ)】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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食道裂孔ヘルニア | 食道は横隔膜を貫通して胃と連続しており、この貫通部分を食道裂孔といいます。食道裂孔から胃が上にずれた(胸腔内に入り込んだ)状態が食道裂孔ヘルニアです。加齢、肥満、体質などが原因と考えられています。 |
逆流性食道炎 | 胃の内容物(主に胃酸)が食道に逆流するために起こる食道の炎症です。げっぷ、胸焼け、咽喉の違和感などの症状を伴う場合は、生活習慣の改善が必要です。症状が強い場合は内服治療をお勧めします。 |
食道カンジダ症 | 口腔内常在菌であるカンジダ(かびの一種)の食道への感染です。ほとんどが無症状で、健康な人でも、体力が低下した時などに発症します。ただし、何らかの基礎疾患(血液疾患、免疫不全、糖尿病、抗がん剤治療)がある場合は重症化することがあります。 |
胃ポリープ | 胃の粘膜がイボのように盛り上がった病変をポリープと言います。良性のものがほとんどですが、大きさや性状によっては、定期的な経過観察をお勧めします。 |
萎縮性胃炎 | ピロリ菌感染によって引き起こされる慢性胃炎です。徐々に胃粘膜が破壊され、胃の組織(胃腺)が萎縮していきます。消化性潰瘍や胃がん発症リスクが高くなることがわかっています。また、過去にピロリ感染していた場合(除菌治療後等)にも見られます。定期的な内視鏡検査が必要です。 |
肥厚性胃炎 | 炎症により、胃のひだが太くなっている状態です。胃がん発症リスクとなるので、定期的な内視鏡検査が望まれます。胃もたれ、胃痛等の症状がある場合は消化器科を受診してください。 |
びらん性胃炎 | 炎症により、胃の粘膜がただれた状態です。胃もたれ、胃痛等の症状がある場合は消化器科を受診してください。 |
表層性胃炎 | 炎症により、胃の粘膜が赤くなっている状態です。 |
憩室 | 消化管壁の一部が外方へポケット状に突出したものです。 |
潰瘍 | 組織が欠損した状態です。治療が必要です。 |
潰瘍瘢痕 | 潰瘍が治った“きずあと”のことです。ピロリ菌感染者では潰瘍の再発率が高くなります。 |
粘膜下腫瘍 | 粘膜の下に存在する腫瘍の総称です。ほとんどが良性ですが、大きさや形状によっては精密検査・治療が必要な場合もあります。定期的な経過観察をお勧めします。 |
【上部消化管X線(バリウム)】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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食道裂孔ヘルニア | 食道は横隔膜を貫通して胃と連続しており、この貫通部分を食道裂孔といいます。食道裂孔から胃が上にずれた(胸腔内に入り込んだ)状態が食道裂孔ヘルニアです。加齢、肥満、体質などが原因と考えられています。 |
食道憩室 | 食道壁の一部が外方へポケット状に突出したものです。ほとんどが無症状ですが、大きな憩室ではつかえ感や胸痛を感じる場合があります。症状が強い場合は治療が必要です。 |
食道アカラシア | 下部食道括約筋の運動異常によって通過障害が起こり、食道内腔が異常に拡張した状態です。食道内に食物や液体が貯留し、つかえや嘔吐などの症状がでます。食道がんの発症リスクとなるので定期的な内視鏡検査が必要です。 |
食道腫瘍 | 食道に発生した腫瘍です。悪性腫瘍との鑑別を要しますので、内視鏡検査が必要です。 |
食道潰瘍瘢痕 | 食道潰瘍が治った“きずあと”のことです。悪性腫瘍との鑑別を要しますので、内視鏡検査が必要です。 |
胃ポリープ | 胃の粘膜がイボのように盛り上がった病変を一般にポリープといいます。 |
萎縮性胃炎 | ピロリ菌感染によって引き起こされる慢性胃炎です。徐々に胃粘膜が破壊され、胃の組織(胃腺)が萎縮していきます。消化性潰瘍や胃がん発症リスクが高くなることがわかっています。また、過去にピロリ感染していた場合(除菌治療後等)にも見られます。定期的な検査が必要です。 |
肥厚性胃炎 | 炎症により、胃のひだが太くなっている状態です。胃がん発症リスクとなるので、定期的な検査が望まれます。胃もたれ、胃痛等の症状がある場合は消化器科を受診してください。 |
びらん性胃炎 | 炎症により胃の粘膜がただれた状態です。胃もたれ、胃痛等の自覚症状がある場合は内視鏡検査をお勧めします。 |
伸展不良 | 発泡剤を飲んでも消化管の内腔が広がらない状態です。検査中にゲップを我慢できない場合、このような所見となります。ただし、腫瘍が原因で広がらない場合もあるため、内視鏡検査が必要です。 |
拡張 | 消化管の内腔が異常に拡がっている状態です。食道アカラシアが疑われる場合は内視鏡検査が必要です。 |
狭窄 | 消化管の内腔が異常に狭くなっている状態です。腫瘍などの場合があるので、内視鏡検査が必要です。 |
粘膜不整 | 消化管の粘膜が不整に乱れた状態です。腫瘍などの場合があるので、内視鏡検査が必要です。 |
バリウム斑 | 消化管の粘膜が凹んでいる部分にバリウムが溜まることです。潰瘍性病変が疑われるため、内視鏡検査が必要です。 |
変形 | 本来あるべき正常な形ではない状態です。腫瘍との鑑別が困難な場合は精密検査が必要です。 |
下垂胃 | 胃下垂ともいいます。胃(胃角部)が骨盤まで垂れ下がった状態です。 |
憩室 | 消化管壁の一部が外方へポケット状に突出したものです。通常、症状はありません。 |
潰瘍 | 組織が欠損した状態です。悪性潰瘍との鑑別を要しますので、内視鏡検査と治療が必要です。 |
潰瘍瘢痕 | 潰瘍が治った“きずあと”のことです。ピロリ菌感染者では潰瘍の再発率が高くなります。 |
粘膜下腫瘍 | 粘膜の下に存在する腫瘍の総称です。ほとんどが良性ですが、大きさや形状によっては精密検査・治療が必要な場合もありますので、まずは内視鏡検査が望まれます。 |
隆起性病変 | 盛り上がった病変です。大きさや形状によっては、悪性腫瘍との鑑別を要しますので、内視鏡検査が必要です。 |
陥凹性病変 | 凹んでいる病変です。大きさや形状によっては、悪性腫瘍との鑑別を要しますので、内視鏡検査が必要です。 |
【乳房超音波】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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腫瘤 | 乳房触診や画像診断で用いられる「しこり」の総称です。 |
乳腺症 | 乳腺がやや張っている状態です。症状として生理前の張りや痛みを強く感じることもありますが、基本的には経過観察と定期的な検査で問題ありません。 |
乳腺嚢胞 | 乳管が袋状に膨らんで、中に液体が溜まった状態です。大きさや形が変化しないか、定期的に検査をお受けください。 |
線維腺腫 | 良性の腫瘤です。良性でもサイズが大きくなることもありますので、定期的に検査をお受けください。また、大きさの変化を自覚された時には、早めに乳腺科外来を受診してください。 |
乳管拡張 | 乳管内に分泌物がうっ滞して乳管が拡張した状態です。生理的な変化で自然に発生し、改善する場合が多く、基本的には経過観察で問題ありません。ただし拡張乳管内に腫瘤(乳管内乳頭腫)を認めるなどの原因がある場合には精密検査が必要です。 |
低エコー像、低エコー領域 | 乳腺組織より反射してくる超音波(エコー)画像の輝度が正常皮下脂肪と比較して低い場合を低エコーと表現します。一般的に腫瘤では低エコー像を示すことが多いです。低エコーの境界がはっきり断定できない像は低エコー領域と表現します。乳腺症による良性の変化などの可能性が高いですが、腫瘤の存在が疑われる場合もあります。 |
授乳中乳腺、妊娠中乳腺 | 妊娠中、授乳中は女性ホルモンの変動の影響で乳腺組織が刺激され、通常より乳腺層が厚くなり、乳管拡張や、のう胞などの所見を認めることが多いです。 |
【マンモグラフィ】
所見・所見用語 | 所見解説 |
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石灰化 | a) 明らかな良性石灰化を表す表現 皮膚石灰化、血管、線維腺腫、円形石灰化、乳管拡張症、中心透亮性 石灰乳、その他(粗大石灰化) b) 上記以外の石灰化 石灰化は以下のような形状と分布から、良性か悪性かを総合的に判断します。 形状 Ⅰ 微小円形 Ⅱ 淡く不明瞭 Ⅲ 多形性 微細線状 分布 Ⅰ 散在性 乳房全体にびまん性に認める石灰化 Ⅱ 領域性 区域性を越えてやや広い範囲で分布する石灰化 Ⅲ 集簇性 1 ヶ所に集中して認める石灰化 Ⅳ 線状 直線状に認める石灰化 Ⅴ 区域性 乳管の走行に沿った1 区域に分布する |
腫瘤の形状、濃度、境界 | 腫瘤は以下のような形状、濃度、境界から良性か悪性かを総合的に判断します。 形状(腫瘤の形の表現):円・楕円形、分葉状、多角形、不整形 濃度(正常乳腺と比較した腫瘤濃度の表現):含脂肪、低濃度、等濃度、高濃度 境界(腫瘤と正常組織との境の表現):境界明瞭平滑、微細分葉状、微細鋸歯状、境界不明瞭、スピキュラ、評価困難 |
局所的非対称性陰影(通称FAD) | マンモグラフィで乳腺組織は白く描出されますが、正常乳腺よりも更に白く描出され、腫瘤ほど境界がはっきりしない陰影をFADといいます。腫瘤が存在している可能性の他、単に乳腺組織の重なりでより白く描出されている可能性もあるため、超音波検査などでの確認が必要となります。 |
非対称性乳腺組織 | FAD ほど白くは描出されず正常な乳腺の陰影ですが、左右差があるものをいいます。正常組織のため問題はないと考えられます。 |
構築の乱れ | マンモグラフィでは乳房を伸展して撮影すると乳腺は扇状の方向性を持って描出されますが、何かの病変で一定の乳腺の方向性が乱れたり、引きつれたりして描出される像を構築の乱れといいます。原因としては乳癌の他、手術や炎症後の瘢痕、乳腺症による変化などがあり、精密検査が必要となります。 |
梁柱の肥厚 | 梁柱(乳腺組織の周囲のリンパ管、血管、靭帯などの総称)が乳腺周囲の脂肪内に白く太い線のように描出される像をいいます。リンパ管や静脈のうっ滞、靭帯の肥厚などを現すため、乳がんの他、リンパ浮腫、静脈炎、乳腺炎などの良性変化でも認められますが、精密検査が必要となります。 |
乳房内リンパ節 | 腋窩(脇の下)のリンパ節以外に、乳房内にもリンパ節が描出されることがあり、1 センチ以内で正常リンパ節像として認められれば、ほぼ問題ないと考えられます。1 センチ以上で正常な乳腺より白く描出されていれば、癌の転移によるものの可能性も否定できないため、精密検査が必要となります。 |
高濃度乳腺 | 乳腺の密度が高いため、マンモグラフィでは、正常乳腺が真っ白な厚い影として写っている状態です。病的意義はありませんが、詳細な読影の妨げとなります(もし小さな腫瘤の影などがあっても、正常乳腺の白い影に隠れてしまうため)。次回受診時には、乳房超音波検査を選択されることをお勧めします。 |
【子宮頸部細胞診】
子宮頸がんは、がんができる組織により大きく「扁平上皮がん」と「腺がん」、またこの2つが混合した「腺扁平上皮がん」に大別されます。
扁平上皮がん
子宮頸部は、扁平上皮細胞で構成される扁平上皮組織で表面を覆われています。この扁平上皮組織から発生するがんを「扁平上皮がん」といい、子宮頸がん全体の8割を占めています。
腺がん
子宮頸部には、扁平上皮よりも子宮体部寄りに粘液を分泌する腺細胞があります。この細胞で構成される腺組織から発生するがんを「腺がん」といいます。扁平上皮がんに比べて検診で発見されにくく、また治療が難しいとされています。従来、子宮頸がん全体の中での割合は低いとされてきましたが、近年特に若い女性を中心に腺がんが増加しており、日本だけでなく世界においても比率が増えているのが現状です。
子宮頸部細胞診の結果表記は、従来は日本独自の分類法である「クラス分類」を用いていましたが、2008年より国際分類である「ベセスダシステム」が推奨されるようになりました。当院では「ベセスダシステム」に準拠した報告様式に「クラス分類」を併記しています。
ベセスダシステム(扁平上皮系)
略語 | 結果 | 細胞診の解釈 |
推定される病理所見 | クラス分類 | 推奨する対処法 |
---|---|---|---|---|---|
NILM | 陰性 | 正常な細胞のみ | 炎症(非腫瘍性所見) | Ⅰ Ⅱ |
1年ごとの定期検診を続けてください。 |
ASC-US | 意義不明な 異型扁平上皮細胞 |
異形成と言い切れないが細胞にHPV感染を疑う変化がある | 軽度異形成疑い | Ⅱ Ⅲa |
HPV検査により、以後の精密検査の必要性を判断することが望まれます。遅くとも、半年以内に外来を受診してください。 |
LSIL | 軽度扁平上皮内病変 | HPV感染や軽度異形成が存在すると考えられる | HPV感染 軽度異形成 |
Ⅲ a | 正常とは異なる細胞(異型細胞)が認められました。異形成が疑われ、正確な診断を行なうために精密検査が必要です。遅くとも、3か月以内に外来を受診してください。 |
ASC-H | HSILを除外できない 異型扁平上皮細胞 |
高度な細胞異型(中等度異形成以上を疑う)が存在する可能性があるが確定できない | 中等度異形成以上の疑い | Ⅲa Ⅲb |
正常とは異なる細胞(異型細胞)が認められました。前がん病変の可能性がありますので、速やかに精密検査を受けてください。 |
HSIL | 高度扁平上皮内病変 | 中等度異形成~高度異形成あるいは上皮内癌が存在すると考えられる | 中等度異形成 高度異形成 上皮内癌 |
Ⅲa Ⅲb Ⅳ |
正常とは異なる細胞(異型細胞)が認められました。前がん病変の可能性がありますので、速やかに精密検査を受けてください。 |
SCC | 扁平上皮癌 | 明らかな扁平上皮癌が存在すると考えられる | 扁平上皮癌 | Ⅴ | 癌と思われる細胞が認められました。正確な診断を行なうために、速やかに高次医療機関を受診してください。 |
ベセスダシステム(腺細胞系)
略語 | 結果 | 細胞診の解釈 | クラス分類 | 推奨する対処法 |
---|---|---|---|---|
AGC | 異型腺細胞 | 腺異型または腺癌の存在を疑う | Ⅲ | 癌と思われる細胞が認められました。正確な診断を行なうために、速やかに高次医療機関を受診してください。 |
AIS | 上皮内腺癌 | 上皮内腺癌が存在すると考えられる | Ⅳ | |
Adenocarcinoma | 腺癌 | 腺癌が存在すると考えられる | Ⅴ | |
Other malig | その他の悪性腫瘍 | その他の悪性腫瘍が存在すると考えられる | Ⅴ |
異形成
HPV感染に起因する異常な変化(=細胞異型)をきたした細胞で構成される病変組織を「異形成」といいます。細胞異型の程度と広がりによって軽度・中等度・高度異形成と分類されます。異形成の段階では、自然経過で正常組織へ修正されることがありますが、異形成の程度が進行するほど修正される率は低くなります。細胞異型がさらに進み、がんとしての特徴を持つ細胞によって組織が構成されるようになった病変をがんと呼びます。がんに変化した組織は、上皮からさらに奥の組織への浸潤(進行)を開始します。
扁平上皮内病変
異形成を認めるものの、奥の組織へ浸潤(進行)する性質をまだ持たない病変を、べセスダシステムにおいては「扁平上皮内病変」と表します。正常組織へ修正される可能性に応じて、軽度扁平上皮内病変(軽度異形成まで)と高度扁平上皮内病変(中等度異形成以上)とに分類されます。
HPV(ヒトパピローマウイルス)
HPV感染が子宮頸癌の原因であることが解明されています。性交渉経験のある女性の70 ~ 80%が一度はHPVに感染しますが、ほとんどの場合は1 ~ 2 年以内に自然にウイルスは消失します。消失せずに長期間感染が続いている方の一部が異形成を経て子宮頸癌を発症します。