- 女性の皆様へ
- 検診でわかる、婦人科の病気について
検診でわかる、婦人科の病気について
婦人科検診は、
①悪性の病気(がんなど)の発見
②治療を要する病気の有無の確認
を目的としています。検診項目により、診断できる病気が異なります。
- ①主な悪性の病気
- 子宮にできるがんには、子宮頸がん・子宮体がんの2種類があり、それぞれ発症原因・発症しやすい年代が異なります。
子宮頸がん
- 子宮の入り口(頸部)にできる
- HPV(ヒトパピローマウイルス)感染が発症原因
- 性交開始後なら若年でも発症するため、20~39歳での女性のがんで最も多い(40歳以降は、乳がんが最も多くなる)
- 初期がんであれば、治療後に妊娠・出産も可能
- 進行がんでは不正出血やおりものの増加を認めるが、初期がんでは無症状のため、自覚症状でのがん発見は困難
などの特徴があります。
早期発見のためには、無症状でも年1回の検診を受けることが望まれます。
→検査に用いるのは、子宮頸部細胞診です。
子宮体がん
- 子宮体部の内側を覆う、子宮内膜にできる
- 無排卵月経周期のホルモン状態が長く続くことが、発症原因のひとつ
- 肥満・閉経が遅い・出産経験がないことは、発症リスクとなる
- 乳がん治療でのタモキシフェン使用や、更年期症状治療でのエストロゲン治療も、発症リスクとなる
- 40歳代後半から発症が増え、閉経を迎える50歳代から60歳代で発症率が最も高い
- 初期がんのうちから、自覚症状として不正出血を自覚することが多い
などの特徴があります。
従来、子宮体がんは頸がんに比較し発症数が少ないとされてきましたが、近年は未産・晩産化の影響もあって発症数が上昇しており、2011年にはほぼ同数となっています。
月経不順や不正出血を放置せず、婦人科で治療の要否を相談すること、体がんの検査の要否を相談することが、早期発見につながります。
→検査に用いるのは、子宮内膜細胞診です。
卵巣がん
- 卵巣内から発生し、卵巣が腫れて増大する
- 悪性の腫瘍として突然発生する場合と、すでに存在する良性の卵巣嚢腫から悪性の組織が発生する場合がある
- 発症には複数の要因が関与する
- 40歳代から増加し、50~60歳代が発症のピーク
- 痛みや不正出血等はなく無症状で進行し、腹満感や腹部膨隆を自覚したときは進行がんになっていることが多い
等の特徴があります。
低用量ピルの使用は卵巣がんのリスクを下げますが、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群は卵巣がんのリスク因子とされています。
→検査に用いるのは、経腟超音波です。
- ②治療を必要とする病気
- 命に直接かかわるものではなくても、月経痛や過多月経・貧血の原因となっていたり、将来的な妊娠・出産に影響を及ぼす可能性のある病気もあります。 そのような場合には、検診ではなく外来診療で継続して治療の必要性を検討することが大切です。
子宮筋腫
- 子宮を構成する子宮筋層から発生する良性の腫瘍
- 悪性に変化することはない
- 30歳代では3人に1人、40歳代では2人に1人の割合で診断される
- 月経量の増加や貧血の原因となっている、妊娠が成立しにくい原因と考えられる、下腹部や腰痛の原因と考えられるなどの場合には治療を要するが、多くの場合は無治療での経過観察が可能
→サイズが大きいものは婦人科内診でも触知できますが、詳細な診断には経腟超音波が必要です。
卵巣嚢腫
- 卵巣内から発生し、卵巣が腫れて増大する
- 月経周期に伴う排卵により、一時的に腫れたのち消失するものもある
- 多くは無症状で、婦人科受診時に「たまたま見つかる」ことが多い
- 茎捻転(卵管や血管が走行する子宮からの根元がねじれて激痛を起こす)により、緊急で手術が必要となる場合がある
- 性質により、治療方法が異なる
→サイズが大きいものは婦人科内診で触知できますが子宮筋腫と鑑別しがたく、また性質を診断するためには経腟超音波が必要です。
子宮内膜症
- 子宮体部の内部を覆う子宮内膜が月経時にはがれてくる、子宮内以外の場所で増殖する病気
- 卵巣内、子宮筋層、骨盤内臓器の表面を覆う腹膜で発生することが多い
- 卵巣で発生すると、卵巣内部に出血がたまり卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)を形成する
- 子宮筋層で発生すると、筋層が厚くなり子宮腺筋症を形成する
- 腹膜で発生すると、臓器どうしがくっつく(癒着)原因となり、月経痛や月経時以外の腹痛・不妊の原因となる場合がある
→内診のみでは診断は困難で、卵巣嚢腫や子宮腺筋症を診断するために経腟超音波が必要です。
悪性・良性いずれの病気も、検診では「発見」するのが目的です。
その後の詳しい診断や、それに基づく治療の要否決定のためには、外来受診が必要です。